同郷のフォトグラファー・Tさんとの私信の中で、図らずも私が常々感じていることや、玉屋物をお創りしたりお届けしたりする時の気持ちを引き出していただきました。
玉屋とご縁を頂く皆さまにも読んでいただけたらとTさんのご了解を頂き、少し長いのですが、私のTさんへの返信をここに記すことにしました。
…いやいや、皆さんへというよりも、私の初心として、という感じの方が強いかな。
Tさん
この度はクリソコラのブレスレットをお求めいただきありがとうございました。
Tさんがこれまではそれほど気にならなかった玉屋物が今回は気になってお求めいただけたということについて、Tさんの日々の流れと私の作ったブレスレットの波がピッタリ出会えたんだなと、創り手としてなによりも嬉しく思っています。
人にもモノにも起こる出来事にも様々な流れや波があって、その出会いが閃きや発見となって関係性の成長に繋がっていると私は思っているので、今まで気にならなかったことに自分のフォーカスが合ったり、拘っていたことが大したことではなくなっていたり、というのはとても自然な出来事だと思っています。
クリソコラのブレスレットがTさんにお求めいただけることになるまでにも、クリソコラが私と出会い、Tさんと私が出会い、お互いがFacebookをやっていて、クリソコラが玉屋物としてサイトにアップされ、それをTさんがご覧になり。たくさんの緩急の流れと波の高低のなかで起こった素敵な出来事なんだと思います。
『玉屋えゐち』のサイドテーマとしてスタートの時から掲げているメッセージには「あなたの石、お預かりしています。」というものがあるのですが、そこには「出会い」についての私のこうした考え方がベースにあります。今ここにあるもは私だけのものではなくて、どなたかのために一時的に私の手元にあって、私という職人のブラッシュアップを経て、本来のあるべき場所に届けられるもの、というのが玉屋物のカタチなのだと思っているのです。
このことは一般的にいわれる「浄化」ということについて私が感じることにも通じているのですが、そもそも、そうして出会えたもの同士の、その瞬間以上の浄化があるのか?という思いです。
石も人も同じ地球で生まれて存在しているもの同士。私が嬉しい時は石も嬉しい、私が悲しい時にはいつもそばにいてくれる、強く干渉し合うことはないけれど小さく灯った場所でつながりあって一緒にいることそのものがもうすでにお互いの浄化なのではと思うのです。
ですから「浄化」という「石が身につける人のネガティブな要素を吸い取って濁るものを清浄にする」という考え方に疑問をもっているのです。そもそも宇宙的時間の長さの中で存在している石に、たかだか100年生きるのが精一杯の人間のそのネガティブな要素をたとえ吸い取ったとして、その石にいったいどれほどの影響があるのだろう?という疑問でもあります。
浄化ということを考えるのであれば、その石とともに楽しい思い出を積み重ねる、ということが身につける人と身につけられる石の双方にとっての最高の浄化じゃないのか、そういうことのために出会えたのではないのか、とも思うのです。
例えばTさんであれば、その石といっしょに森を歩く、ブレスレットを外して置く時、そのクリソコラを撮ってもっとも美しいと感じる場所に置いておく、そういうことがTさんとその石にとっての「浄化」ということであって、そこに一般的にいわれているどこの誰が言いだしたかわからない「方法」は必要ないのではないでしょうか?
Tさんがそのブレスレットを付けて楽しい時間を過ごす時、その時間を共有する石もその楽しい波の中にいる、私はそういうことで良いように思っています。
クリソコラのブレスレットといっしょにお送りした私の名刺にはこのように書かせていただいています。
You can get any stones you’d like. Some say each kind of crystal has a meaning. But that’s not the case. It’s something beyond human wisdom.
自分がいいと思った石を手に入れればいい。何に効くとか、人が意味付けしているような、石のエネルギーはそういうものじゃない。石は人間の知恵(や思惑)をはるかに超えているものだ。
自分が素敵だと思う石に出会うことができた自分を信じる。そんな「あなたの石」に確かにたどり着ける場所として、玉屋がTさんのお手伝いができたのだとしたらこれほど嬉しいことはありません。どうぞTさんのお好きな、Tさんの感じる感じ方で身につけてそばに置いて頂けたらと思います。
長くなりましたが、最後に。
ワックスコードは経年劣化して使用頻度や癖によっては切れてしまうこともあります。その場合にはパーツや石さえ無事であればリフォームが可能です。いつでもお申し付けくださいませ。
この度は玉屋物をお求めいただきまして誠にありがとうございました。
photo by Tamiko Uchida
『Tami Camera』